この学園にきてから一ヶ月もたった。
意外と早く慣れて、それなりに友達も出来て、授業もついていけなくもなかった。…ただ、二つを除いて…。

そのうちの一つは、慣れるかどうか、という意味ではないが、前に親から言われた、小さい頃に仲良かった子がこの学園に通っている、ということだ。
その子は、私が覚えている限りでは、同い年で、男の子。目がクリクリしてて、女の子の私より可愛く見えるほどだった。結構仲が良かったのは覚えているし、恥ずかしい思い出も多々あるのであまり思い出したくはないが…。この一ヶ月、一応その男の子を探しているのだけど、見つけたことないような気がする。……名字は覚えてないけど、確か名前は…―――





「鈴音ー!おっはよーっ!」

「あ、伊吹!おはよう」


元気よく挨拶しながらこっちに向かってくるこの子は、私が此処にきて初めて出来た友達…藤堂 伊吹(トウドウ イブキ)。
よく髪をお団子にしていて、とっても可愛い子。
私は歩いている足を止めると挨拶を返して、伊吹が隣までくると並んで校舎の方に向かって歩き出す。



「どう?此処にきてだいたい一ヶ月たったけど…慣れた?」

「うん…寮の方はともかく、学校の方はかなりね」


私が大きく頷いてそう言うと伊吹は微笑んで、よかったー!と叫ぶ。
つられて笑っていると門のところで人だかりが出来ているのが見えた

私と伊吹は顔を見合わせると一緒にその人だかりの方へと目を向ける。






―――……そして、もう一つの慣れない"一つ"は、この人だかりにいる中心人物である。