二人にお構いなしに、雪はただただ降り続けて。

心配することもなく、振り続けて。

しばらくしてようやく口が回り始め、家まで送るとうるさく言うふーみんを、もちはしつこいくらいに「大丈夫」と言って止めた。

もっちーは消雪パイプから溢れる水で出来た水溜りに入ってしまっていたようで、コートの下に来ていたジャージが濡れて重たそうだった。

熱があるのか寒さのせいか、ほんのり赤い顔をしたもちは、ふーみんがついてくることがないように見送ってから家まで足を運んだ。


相変わらず雪は降っていて、傘も重くなる。

だるい体を引きずって、もちは家に帰った。


もとより、

彼の家はそこではないのだけれど。


記憶操作で作った、赤の他人の家。


もしかしたら、

本来ならその居場所は別の誰かの居場所だったかもしれない。


それでも暖かく向かいいれてくれる、血のつながらないはずの家族に。


それでも、

「おかえり」と言われるほかなかった。


それらの人の、単純かつ難解な記憶にとって。


自分はいなくてはならない存在になってしまった以上。


泣いても笑っても、

「ただいま」と言わざるを得なかった。