もちモノガタリ



「狭いけど」


その一言と同時に開かれた

部屋のドアの向こうに、

もち は一人感嘆していた。


そもそも、エントランスのあたりから

すごいのだ。

広い広い駐車場、駐輪場を抜けると

小さなタイル床の道に出て、

そこに見えたのは大きな自動ドア。


なんていうかキラキラしてるし

ピカピカだし広いし、

とても、来る前の前置きである

『狭いし汚い』とは言い難いのだ。


坂井風呂敷は、そんな高層マンションに住んでいた。