5月31日(金) その5


 助産師さんが巡回に来る。

「どう? ちゃんと飲めてる?」と記録用紙を確認し、眉をひそめた。



 ミルク、20mlずつしか飲ませていない。




 それ以上は、蓮がすごく苦しそうな顔をする。

 一度、30mlまで飲ませたら、すぐに吐いてしまった。

 消灯後に吐かれると、精神的なダメージが大きい。



 きっと、蓮の胃は60ml(母乳40ml+ミルク20ml)で満タンなのだ。

 だから、仮にそれ以上飲ませることに成功しても、気持ち悪くて吐いてしまう。


 大人だって、食べ過ぎれば吐く。

 嫌がる蓮にミルクを無理強いするのって、虐待に思えてならない。


 でも、このままじゃ、マズイ、と自分でも思っている。

 私だって、明日退院したい。




「やっぱり、ミルク20mlじゃ、足りないと思う」と助産師さん。

「はい。でも、それ以上飲ませると、すぐに全部吐いちゃうんです」と私。


「まだ小さいからねぇ。でも、これだと明日の退院が難しくなっちゃうから」



 分かっている。

 だから、どうしたら良いか、考えていた。



「一気にミルク40ml飲むのが難しいみたいなんです。授乳間隔を狭めて、2時間か、2時間半に一度、少しずつ授乳していきたいんですけど」




 助産師さんが、しばし考え込む。



「でも、そうするとお母さんの負担が大きくなるな」

「大丈夫です。あと少しなので頑張ります」




 また、考え込む助産師さん。





 もし、ダメと言われても、記録用紙を改ざんしてやるつもり。



「じゃあ、大変だけど2時間半でやってみようか」


 ホッとする。


 肉体的には大変だけど、精神的にずいぶん楽になった。





 早速、授乳の時間。


 とは言え、


 眠い……





 
「頑張ろう」

 蓮と自分を励ました。