最悪な事態…───。

これはあの赤髪の男、お調子者(ウッドペッカー)が整えた舞台。

まず特殊塗料の予告状。『パームの金貨を貰いうける』という文面により、氏は“ある理由"で警察を頼る事ができなくなった。

警察に頼らず館全域を警備するとなれば、必然的に派遣型軍事組織WALTZ(ワルツ)に依頼する事となる。

更に月日を指定した犯行予告の裏には仕掛けがあった。この日、WALTZ(ワルツ)の本部では各隊の隊長、副隊長を集わせ会議を行う。

これにより各隊の指揮は一時的に著しく低下し、依頼人(クライアント)の立場で考えれば、もう一隊を更に雇うか、特兵を雇うかのニ択に及ぶ。

そして氏は特兵を雇う事を選んだ。

“特兵ガンツ・ジュード。
通信機の不装備等、業務態度の不従順さと裏腹に、その実績を買われ、最年少で特兵に昇格。”

その情報がどこで取引されたのかは定かではないが、敵はそこを突いてきた。

全てが盤上を動く駒、全てが戯れの一時に過ぎず、あの男は奇抜な演出家である。

思うに、氏の隣にいる兵士は…───。


「“暴君(サップ)"…!」


ガンツが歯軋りをした刹那、兵士は自身の“面"を剥がした。

眉間にしわを寄せながら、サングラスを掛けるその男、ボズ。

そして「ひっ」と小さな悲鳴を氏が漏らした瞬間、二人は消えた。


「な、なんだ、何が起きてるんだ…!」

「と、特兵殿、これは…!」

「黙れ。逃げた訳じゃねえ。“そこ"にいるんだ。空間の“隔離"。“呪われた力"…!」

「そう、これは“呪われた力"。金貨を首に掛けるだけで“あんな"事ができる品物だ。そう言われるのも納得だよ。だから政府は厳格な審査を定め、不正所持を禁じた」


そう得意げに語るベックは、首元から一枚の“金貨"を見せる。


「警察に頼れるはずないよな。自分の首を締める事になる。だから代わりに俺達がお仕置きに来た」

「はっ、自分(てめえ)の首の“それ"は何だよ」

「はて、なんなら捕まえてみるかい?」