砂利が敷き詰められた館前では、WALTZ(ワルツ)の兵士達が揃い、輪になっていた。
その中心に、縄で縛られたお調子者(ウッドペッカー)と暴君(サップ)と思われる男が二人。
飴と鞭(むち)などではなく、延々と鞭のみの尋問が続く。
そこに氏、特兵、兵士の三名が現れると、輪の中から一人の兵士が駆け寄る。
「ガンツ殿。現在、両二名は無言を撤し…───」
「ああ、聞いた。あそこにいるんだな」
「はいっ」
緊張が漂う中、ガンツは輪の中心へ。
「────…っ!」
そこには情報にあった“赤髪の男"も“スキンヘッドの男"もおらず、ただ身ぐるみを剥がされた男が二人、横たわっているだけだった。
するとガンツははっと瞳孔を開き、男達の皮膚を調べ始めた。
一見、本物のそれと何ら変わりはないが、その皮膚は意図も簡単に剥がれたではないか。
更にその男二人は、塀外の巡回をしているはずの隊兵二名。
「“人工皮膚"…───」
「いい勘してるぜあんた。だが正確には“フォームラテックス"。特殊メイクに用いられる技法でね、時間の関係上、荒削りな仕上がりにはなったが、中々の出来映えだろ?」
背中から聞こえた声に、ガンツは視線を転がす。
気づくべきだった。お調子者(ウッドペッカー)が変装を十八番(おはこ)としている事を。
気づくべきだったのだ。先程駆け寄った兵士が「特兵殿」ではなく「ガンツ殿」と呼んだ事を。
「隊兵は特兵を固有名詞で呼ぶ事を許されてないはずだ。どこで俺の情報を“買った"」
「おや、そうだったのかい」
「うちの兵に変装するとは味な真似をしてくれる。なあ…───」
“その"兵士が己の顎(あご)に指を掛けた途端、皮膚が剥がれ赤髪が揺れた。
「───…お調子者(ウッドペッカー)…!」
「ご機嫌はどうだい“特兵殿"」

