ノブレッソブリージュ




守らなければならなかったんだ。



それがどれだけ残酷な行為であっても、どれだけ文明人だる義務に違反しようとも、二人には『許されずとも遂行すべき義務』がある。



それこそ帝国を救う即ち『歴史の改竄』である。



いちいち訪れる目の前の殺人劇に、彼は一体何度涙を流すのだろう。



重すぎた荷を背負い、一体あとどれだけ歩くのだろう。



たぶん『来るべき日』がくるまでずっと。



それまでこの両翼は羽ばたき続ける。







「なあ、ごめん、ごめんノエル…」



「謝るなよ」



「ごめん………」





冷たくなった両手を重ねて、旅人二人はただ嘆いた。



お互いの手の甲には、『持つべき者』たる証が痛々しく彫られている。