お出かけしよう。
陸真くんが、好きな場所。どこでもいいよ、私、そこに行きたい。



突然言われたその言葉に、少し驚いた。
いつも、おねだりなんて全然しない彼女だから。

俺の好きな場所…。
どうせなら彼女も好きそうな場所がいい。そう思って思い浮かんだのは、家の近くの川沿いにある、自然の花畑のような場所だった。


わあ、と目を輝かせて俺に笑いかける。
綺麗だね、ここで小さいころ遊んだりしたの?と。

うん、そうだよ。俺と香耶で毎日のように遊んでたんだ。

そっか、と君は少し寂しそうな顔をした。



…私も、陸真くんの幼なじみだったら良かったのにな。そしたら、もっといっぱい陸真くんのこと知ってたし、遊んでた。たくさん、思い出をもってる香耶ちゃんが、うらやましい。


最後のほうは、とても小さな声だった。
でも、うつむく彼女とは裏腹に、俺はものすごく笑顔だった。


(ねえ、知ってた?
君が言ったその言葉、俺はもう出会った時からあいつに対して思ってたんだ。
だから、君も、もっと俺を好きになればいいのに。)



香耶ちゃんとはここで何をしたの?

鬼ごっことか、花で遊んだりとか、かな。花冠作ろうって香耶がうるさくて。

そっかあ。花冠、可愛いもんね。私も作ってたよ。





…花冠は、もう無理だけど。
代わりに、カチューシャとブレスレットを渡した。




「誕生日おめでとう、美華。」



ありがとう、そう言って微笑む君はどこまでも綺麗だと思った。


             end