「陸真ー!カラオケ行かねー?」

「んー、パスー。」

「なんだよー、お前最近さらにノリ悪いぞー。毎回毎回断られる寂しい俺の身にもなってみろっ。」

「わりーって。また今度な。今日は俺用事あるから。」


…その台詞いったい何回目だよ。

と、俺、光輝は思っていた。
なんっか怪しいよなあ…。毎日、いったいどこで何してんだ?


気になることは多々あるけど、後をつけたりはしたくない。まあ、いずれ遊んでくれるんならいいや。

そう思って、他の友達にカラオケを誘いに行こうと教室を出た。






「じゃあな!光輝ー!」

「おー!また行こーなー」

こうして、カラオケを終えた俺らは別れて、家への道を歩く。

今日行ったとこけっこー良かったな、聖鈴の子沢山いたし。

今日は、いつも行くカラオケが満室だったから少し遠いが聖鈴女学園の近くの所に行っていた。


よし、今度からここも行こう。


…なーんて考えながら時刻を確認しようとポケットに手を突っ込み、…だけどそこに携帯はなかった。


…やばい。忘れてきた。


慌てて来た道を引き返してカラオケへと向かった。
幸い、まだ俺らがいた部屋はまだ誰も客が来てないらしく、探させてもらうよう店員の許可を貰い、俺は部屋へと向かった。


「お、あった。」

無事携帯を見つけ、さあ帰ろうと歩き出した、時に目に入った見覚えのある後ろ姿。

あれ?あいつ……


今度は横にいる女の子を見て微笑んでいる。そんな表情見たことねえけど、その顔は紛れもない俺の親友の顔だった。


「陸真!?」


途端に振り向くそいつ。
…間違いない、陸真だ。


「光輝!?なんでこんなとこに…」

「それはこっちの台詞だっつーの!人の誘いは断っておいて、何やってんだよ?」

「…陸真くん、友達からの誘い断ってたの?」

うっ、と声を詰まらせる陸真。まあ、…と言いづらそうに答えた。


「てか、この子誰?」

「…わり。言ってなかったんだけど、彼女。」

「はあああっ!?」



こんな可愛い子が、陸真の彼女だあ!?
てか、言えよ!


驚きで何も言えなくなってると、その子が俺を見てきて、 ペコッと律儀に頭を下げた 。


「あの、初めまして。木下美華です。」

「ああ、こちらこそ。陸真の友達で、光輝っていいます」



本当に、いつのまにこんなにいい子を彼女にしたんだ、コイツ。


ぽけーっとその子を見つめていると、気にくわなかったのか陸真が間に割り込んで来た。


「お、何陸真。やきもち?」

「……。」


ははっ。おもしろ!
それを存分に楽しむ俺と、隣で困り顔で見つめる美華ちゃん。
そんな不機嫌な陸真にとどめを指すように、美華ちゃんが口を開いた。


「あの、陸真くん。…お友達に誘われたんならちゃんとお友達と遊んでね?…私も、たまには千絵ちゃんと遊びたいし。」


今日は私先に帰るね、家、近いから大丈夫だよ、と。伝えたいことすべて告げて美華ちゃんは帰って行った。「じゃあね、光輝くん!」と俺へのみあいさつをして。



横を見てみると、あからさまにショックを受けている陸真。

ははっ、ざまーみろ!俺の誘いを散々断ってた罰だ!


情けない親友の姿にまた笑いつつ、こいつはこんなに分かりやすい奴だったか、と考える。
答えはNOだ。

あの、恐ろしく天然で毒をはいた子は、こんなにもこいつを変えたのか、と。

少し尊敬な気持ちも浮かべながら、落ち込む彼氏くんの肩を叩いた。