星空の魔法

『もう一度だけ、お願い』

長谷部さんはあたしを抱き寄せようとした

『だから、ダメだって』

『お願い』

そう言って、あたしの右腕を強引に引っ張った

あたしは引っ張られるがままに、抱き寄せられて、そのまま抱きしめられていた

心臓は鼓動を早める

『すごくドキドキしてるね』

あたしは何も言わなかった

いや、言えなかった

シーンと静まり返っているグランドに、2人きりで、影が一つになっている

あたしの腕は、躊躇いながらも長谷部さんの背中をギュッと抱きしめていた

ダメだとわかっていながら

こんな事していいわけないのに

もちろん、その後は長谷部さんがその次を求めてくる事を、今度はわかっていた

さっきまでの流れからいって、求めてくるってわかっていた

案の定、長谷部さんは、あたしの顔を覗き込むようにして、顔を横に倒して、あたしの顔に近付いてきた

あたしはバカだなって思う

なぜ、そんな事をって

ダメだってわかってるはずなのに

あたしはそのキスを受け入れた

軽く唇を合わせた

とても長い時間に感じられたキスだった

柔らかくて、暖かいキスだった

唇を離すまでの時間は、とてもゆっくりと過ぎていった