星空の魔法

こうなる事を望んでいたわけじゃない

本当に長谷部さんの誠実さを信じていた

だから、ドキドキより怖さの方が大きい

鼓動を早めている心臓

どうしたらいいのかわからない現実

長谷部さん、酔ってるのかな?

とりあえず重なる手を振り解いた

『ダメですよ、酔ったからってそんな事しちゃ』

『酔ってないよ、全然』

真っ直ぐにあたしを見つめている瞳

眼鏡の奥の瞳をまともに見れなかった

あたしは目をそらして、また星空を見上げた

しばらく沈黙が続く


居ても経ってもいられなくなって、とりあえず立ち上がった

この現状をどうすればいいのだろうか

星空は何も答えてはくれない

こんなにたくさんの星空の下で、迷っていた

とりあえずマウンドまで歩いた

少し盛り上がっているマウンドまでたどり着く

気付くと、あたしの目の前には、長谷部さんが居た

何も言わず、ただゆっくりとあたしを抱きしめた

ここで、長谷部さんの背中に手を回しちゃいけないんだって、自制心が働く

あたしは、長谷部さんを軽く押して体を離した

『奥さんに怒られるわよ。ダメだって、こんな事は』

『わかってるよ、でも少しだけでいいから』