だから…、話せていない。


確かにいいやいいやと後回しにしたこともある。


ちゃんと話しておけばよかったなぁ…。



目を閉じると聞こえてくる怒鳴り声。
祖父とお母さんと妹の3人分。

頭の中で木霊する。



「っ、うっ…。」



やだ。
やだよ。

どうして家なの?
他所でいいじゃん。


もう全部、嫌だよ…。



気が付いたらケータイを手にして、斗真に電話をかけていた。



『…美由里?』



なかなか言葉を発しない私を不思議に思ったらしい斗真が言う。

嗚咽を噛み殺しながら、私は一言だけ言った。



「家庭崩壊って、目に見えるんだね。」