渡部さんは私に気付くこともなく歩いて行ってしまった。

それもそのはず、私は渡部さんを知っているけど、彼女は私を知らないんだから。



「可愛い人じゃない。胸もなかなか…。」



と杏。

…見た目の非はないんだろうか。



「…だよね。」



静かに同意するしかできなかった。
そんな私に杏は不思議そうに首を傾げた。



「何かあったの? あの人と…。」

「…恋敵。…かな…。」

「は?」



私はあの日のことを詳しく杏に話していなかったことを思い出した。



「……、実は、ね?」