キンモクセイがふわっと香った。 秋だ、と思った。 途端に、アイツの幸せそうな顔と、星のない月夜が脳内に浮かんだ。 アイツは夜空を見上げながらいきを深々と吸い、こう言った。 「私、キンモクセイがあるから秋が好きなんだよね。月夜とかだと本当にロマンチック♪」 「ん〜。」 俺はその日放送されるサッカー中継のことを考えていた。 すると、アイツの手が突然俺の口覆ってきた。
