(((おまえはナイわ。)))


女神を見守っていた誰もが思った。

女神と同じ制服を着た男子高校生が、満面の笑みを浮かべ、千切れんばかりに手を振りながら駆け寄ってきた。

腰で緩く履いたズボン。
ブレザーの下は、おそらくは校則違反だと思われるパーカー。
フードをブレザーの背に出し、胸元は大きめに開けている。

幾つも連なったピアス、リング、長めの赤く染めた髪。

顔立ちは若い女性たちを虜にできるほど甘く整ってはいるが、ただ、それだけ。

特別でもなんでもない、イケメンと呼ばれる類いのチャラめな普通の高校生。

しかもその手に携えているのは、駅前の屋台で買えるたこ焼き。

だれもが一度は憧れる、夢の職業や贅沢な生活を一蹴して見せた女神の心を動かすようなナニカを、持っているとは思えない。