「どうして?
本当になんだって思いのままだよ?
君レベルの子なら、妻に迎えてもいい。
二人で世界中を遊び回って、セレブ生活を満喫しようよ。」
「そなたに財力があるのは、よくわかった。」
女神が、美しいが彫像のように硬い顔を男に向けた。
「だが、金で人は手に入らぬ。
手に入ると思っておるなら、とんだ思い上がり。
金に用がなくなれば呆気なく消える、儚い縁じゃ。」
男はその場を後にした。
女神の言葉が胸を去来する。
男は巨額の慰謝料を払って別れた妻を思い出した。
元妻は再婚し、その金を元手にペンションを建て、夫婦で切り盛りしていると聞いている。
自分に捨てられ、平凡な生活を送る哀れな女だと思っていた。
だが、本当に捨てられたのは誰なんだろう?
捨てたと思っていたたくさんの友人や女たち。
彼らに用無しの烙印を押されたのは…
(学んでこなかった人と人との繋がりを、今から勉強し直しだな。)
男は少し笑った。



