小春日和のある日の午後、ある駅前に女神が降臨した。

背に流れる艶やかな漆黒の髪。
長い睫毛。
澄みきった大きな瞳。
微かに色気を滲ませる紅い唇。
滑らかな白雪のような肌。
小柄な身体を包んだ…

制服?

女子高生?

そんなはずはない。

その美しさは、神の愛でし芸術品。
いや、彼女こそが美の女神。

誰もが振り返り、目を奪われ、足を止める。

だが、近づけない。
遠巻きに、遠巻きに。

威厳に満ちたオーラを放って花壇の前に設置されたベンチに腰掛けた女神が、周囲の時すら止めていた。

なぜここに?
なんのために?
誰を待っている?

女神に声を掛けられる者などいるのだろうか?
誰が女神のお眼鏡に叶うのか?

人々は固唾を飲んで見守った。