「あ。」
細い指を顎に当てた君が、短い声を上げた。
「ん?」
「前にそなたが買ってきた、小瓶に入ったぷりんがあったであろう?
あれを買って帰らぬか?」
小さな君が、上目遣いで俺を見る。
吸い込まれそうな澄んだ瞳で。
「アレ、美味しかった?」
「うむ。」
「じゃ、買って帰ろ?
家で、一緒に食べよ?」
「うむ。」
「今日は少し寒いから、あったかい紅茶淹れよっか?」
「うむ。」
君の返事は短い。
元々、必要なこと以外、あまり長く話す人じゃない。
でも、君が喜んでいるのがわかるよ。
君の紅い唇が薄く綻んで、頬が桜色に染まるから。
嬉しくなって、俺も笑う。
途端にさっきは寂しいと感じた雨音が、楽しげなメロディーを奏でて世界を埋め尽くす。