君が差し出す傘を受け取って、空に向かって広げた。

君が濡れないように、と少し大きめの傘を買ったケド、二人で入るとやっぱり狭い。


「コッチ、おいで?」


華奢な肩を抱き寄せると、君は素直に身を寄せてくる。

仄かに香る麝香。

香水をつけているワケじゃない。

使ってるシャンプーも入浴剤も、俺と同じモノ。

なのに君だけから香る麝香。

君だけの香り。

こうしてずっとくっついてれば、いつか俺からも同じ香りがするのカナ?

君に囚われて。
君に染められて。

こうしてずっとくっついてれば、いつか君からも俺の香りがするのカナ?

君を囚えて。
君を染めて。

君と俺だけの香りに。

君の瞳によく似た色の傘が、回る。

楽しげにクルクル回って、世界を彩る。