予報通り、午後からは雨。


「うさちゃん、帰ろ。
傘、入れて?」


君は長い黒髪を揺らしながら、不思議そうに俺の顔を見上げる。


「持って来ておらぬのか?」


「うん。」


「今朝、あれだけ傘を持ってゆけと妾に勧めたのは、そなたなのに?」


「うん。」


「…
可笑しな男じゃ。」


君が小首を傾げて笑う。

君が笑うと雨粒がキラキラして、世界が光で包まれているよう。

眩しさに目を細めて、俺も笑う。

なにも可笑しくなんかないよ。

わかってて、持って来なかったンだから。

君と二人で一つの傘に入りたくて、わざと持って来なかったンだから。