景時は心の中で舌打ちした。


(コイツ、やっぱムカつ)


「いや。
ムカついてンのは俺だから。」


エスパー?!

景時は見開いた目を瞬かせながら、意地悪そうに笑う黒曜を見た。

まただ。
なんで、心読めンの?


「おまえ、わかりやすいンだよ。」


ぅわぁ…
心中の疑問に、返事しちゃったよ。

こりゃ本物だ。


「紅玉はまだナニも忘れられてないのに、単細胞の顔面崩壊野郎なんかの傍で笑ってて…
心からムカつくわ。」


単細胞の顔面崩壊野郎…

ダレだ?
…まさか俺か?

この、嫌味な顔だけ野郎め!

景時は下唇を突き出して、黒曜を睨んだ。

だが、人をバカにした顔をしてるクセに、やけに優しく光る黒い瞳を見て、文句を飲み込んでしまう。


「あーあ。
紅玉、早く戻って来ねぇカナぁ。」


「いやいや。
うさちゃんは戻らねーから。
返さねーから。」


ベランダの柵に寄りかかり、野郎が二人並んで星を見る。