「…
紅玉は…
いつも、あんなふうに笑っているか?」


「笑ってるよ。」


景時も、微笑みながら部屋の中を見た。

二人の男の視線の先は同じ女。


「笑ったり、拗ねたり、困ったり…いつも可愛いよ。
最初は、無表情な人だなー、と思ったケド。」


「…
月を…
見ているか?」


「え…」


景時が隣を見ると、黒曜は視線を移していた。

空の彼方を睨むような、端正な横顔。

憎しみと、哀しみと、愛しさと…
色々な感情が入り乱れたような、黒い瞳。


「…見てる。」


景時は髪を掻き上げ、溜め息を吐きながら言った。

黒曜は知っているのだろう。

うさぎが月を見上げる訳を。

それどころか…
同じ気持ちを共有しながら、同じように月を見ているのかもしれない。

黒曜の知っている『紅玉』は、景時の知らないうさぎ…