「どーした?
なんかあったンか?」


薫の部屋にイスの類いはない。

ローテーブルの脇のクッションにうさぎを座らせた薫は、キッチンに入りながら彼女に声を掛けた。


「…
あの… その…
あ、ほら、あれじゃ。
そなたの部屋は…
部屋は…
…これらはなんなのじゃ?」


話を逸らそうと、目についたモノを話題にしようとしたのだろう。

その『目についたモノ』は、理解不能だったのだろう。


(大失敗だし。)


薫は必死で笑いを堪えた。


「景時は?」


「クァwセdrftgyフジコ??!!
か…かか景時はこんびにに…」


「ぶふっっ」


…堪えきれなかったわ。

鬼神様がモジモジするほど口にしにくいナニカは、景時が関係するワケだ?

わかりやすすぎンだろ。

キッチンを出た薫は、ホットミルクが入ったマグカップをうさぎの前に置いた。


「じゃ、話してみ?」