声は掛けずにドアスコープを覗き込む。


(うっそ…)


相手を確認した薫は、慌ててドアを開けた。

外に立つ人物の腕を掴んで素早く中に引きずり込み、共有廊下に誰もいないのをキョロキョロと確認してからドアを閉める。


「ちょ…
ナニやってンの…」


呆れた薫が見下ろしたのは、Yシャツの裾を小さな手で握りしめて俯くうさぎだった。

いや、一応ヒトに化けてるケドさー…

一応マンション内だケドさー…

裸Yシャツはダメだろ。


「そんな格好で部屋出ちゃダメだろ?
…ん?」


身を屈めてうさぎの顔を見ようとして、彼女の様子がおかしいコトに薫は気づいた。

なんつーか…モジモジしてる。
なんつーか…頬を染めている。


(ダレ? コレ。)


なんつーか…乙女???

こんな彼女は初めてだ。


「…
とりあえず…
上がる?」


うさぎは俯いたまま、コクリと小さく頷いた。