(人?
それも‥‥‥童。)


うさぎは誰かの気配を感じて、首を傾げた。

こんな夜中に?
こんな場所に?
童?

彼女は景時と出逢った廃ビルの窓枠に腰掛けて、月を見ていた。

ここからの眺めは気に入っている。

だが、相性が悪いのかもしれない。
よく邪魔が入る。

うさぎは、自分を初めて見た時の景時の茫然とした顔を思い出し、苦笑した。


「誰かいるの?

え… 角…」


後ろから幼い声が掛かった。


「鬼じゃからな。
逃げよ。
家に帰れ。
親が心配しておるだろう。」


振り返ることなく、うさぎが冷たく言い放つ。

立ち竦む。
だが一瞬の迷いの後、近づいてくる気配。

うさぎは眉根を寄せて、隣に立った少女を見た。

頬を染め、うっとりした声で少女が呟く。


「キレー…
お姉ちゃん、オニなの?
全然コワくないね。」


「…
喰らってやろうか?
早く帰れ。
もう寝る時刻は過ぎておるだろう?」