山の中腹にある彼女の庵は、いつも千客万来。

ひっきりなしに人間共が顔を出す。


「鬼姫様、鬼姫様。」


「どうした。」


「鬼姫様のお薬で息子の病が良くなりました。
でも、その、お代が…
畑で穫れた芋では…」


「いつも言っておろう。
薬など、元々はその辺に生えておる草じゃ。
代などいらぬ。
芋は倅に食わせるが良い。」





「鬼姫様、鬼姫様。」


「どうした。」


「鬼姫様が土を肥やして下さったおかげで、今年も里は豊作でございます。
少しばかりではございますが、御礼を…」


「いらぬ。
里の者で分けるが良い。
あ。
その煮物は頂こう。
そなたの奥方の煮物は、いつも旨い。」