「カット!」



監督の声がかかって、私はズズズと後ずさり。



「……なんだよ」


「だ、だって恥ずかしいんだもん」



なぜか怒ったような顔の黒崎くんに目線を落として返す。



こんな!こんな近くで恥ずかしいから普通!



そういうシーンだから仕方ないけど、カメラ回ってないときは耐えられない。



あからさまな態度に、黒崎くんがにやりと笑って近づいてくる。



「なーんか、意識しすぎなんじゃない?」


「そんなことないよ。黒崎くんは違うかもしれないけど、私は慣れてないもん」


「……おい。誤解させるようなこと言うな」


「え、じゃああんまり恋愛経験ないんだ?」


「へえ、立花さん言うねー」


「へっ!?や、あの」



うわ、調子乗りすぎた……!



さらに距離を詰められて、どこを見ればいいのか分からない。



助けを求めるべく横を向くと、「仲良いのはいいけど、撮影始めるよー」って。



それを聞いた黒崎くんは、にやりと意地悪な笑み。



違うのにー……。