お、終わらない……。 タイムリミットを意識し始めた10時。 集中していた顔を上げて、教室を見渡す。 「あれっ!?」 思わず出した声は静かな教室に響いてしまって、黙々と解いていた黒崎くんの手を止めてしまった。 「……先生?」 「うん」 「さっき出てったよ。どこ行ったか分かんないけど」 「そっかー……。ありがとう」 途中でも帰らせてもらえるよう、お願いしようと思ったのにな。 自力で頑張るしかないか。