「なーんか機嫌いいっすね」
冬の初めのこの時間の撮影は寒すぎて、カメラの後ろでガタガタ震えていたら。
不意に後ろから声をかけられて、すぐにだれか分かった私はムッとしながら振り返る。
相変わらず黒崎くんは余裕そうに笑っていて、どうして私はこんなに動揺してるんだろうって。
「デートのこと。いい考え思いついちゃって」
「へぇ。なに?」
「映画の宣伝しつつ、テレビで放送するの!」
笑顔で言うと、なぜか黒崎くんは眉間にシワを寄せた。
こっわぁ……。
思わずビクっとしてしまって、ゆっくりうつむく。
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