H*B プリンセス



……やばい。



ポタっと太ももに涙が落ちて、焦りで体が熱くなる。



バッグの中からタオルを取り出して目に当てようとするのと、私に影ができるのは同時だった。



黒崎くん……。



長い足ですぐに誰か分かって、私の異常に気づいてくれたんだと思った。



その上隠してくれるなんて、優しいんだ 。



「次降りんぞ」


「ん……」



黒崎くんの優しさに涙が溢れて、顔をタオルに押し付けたせいでくぐもった声で答える。



不意に電車の振動と同時に、私の膝に黒崎くんの足が当たった。



かなり密着してるのかな、恥ずかしい……。



それでも私を隠そうとしてくれているんだと思うと、涙が止まらないからもうやめてほしい。



いつ週刊誌に撮られてもおかしくないっていうのに。



そのリスクも気にせず、私なんかのために黒崎くんは……。