H*B プリンセス



私だけかもしれないけど気まずくて、携帯を見る。



茉希からメッセージが来ていて、何気なく開く、と。



普段あまり使わないせいでやり取りも少ない私の携帯には、画面の下の方にこの間の隼人からのメッセージが残っていて。



思いがけず見えた隼人の名前に、胸が締め付けられる。



ふとした瞬間に思い出すの、もう嫌だな。



また泣きそうになって、目頭に力をこめた。




「もー、やだぁ」



電車が途中の駅に停まって、ドアが開くと同時にそんな声が聞こえた。



甘いその声に顔をあげると、私の前にはカップル。



う、わあ。タイミング……。



慌てて目をそらすも、仲むつまじい姿をなかったことにするのはできなくて。



じわあ、と視界が揺れたことに気づいたときにはもう遅かった。



「……っ」



耐えろ、私。



電車の中なんだから。