「柚奈ちゃん」
「はいっ」
振り向くと、台本を手にした監督が立っていた。
「ここのシーンなんだけど。『あの子になんて敵うわけない』って友達に相談するシーン、泣ける?」
「はいっ。頑張ります」
そのシーンは、璃久くんを好きな子に宣戦布告されたところだ。
いじめまがいのことをされて、精神的にも辛くなってしまったところ。
「よろしくね」
「はい!お疲れ様でした」
監督に挨拶して、台本にメモする。
あとでこのページ確認しておこう。
家にある原作を思い出しながら、これからの予定を考えて自然と笑みが漏れた。

