H*B プリンセス



トイレから戻ると、茉希はまだメニューを開いていた。



その目はメニューを見ていなくて、どこかをぼーっと見つめている。



「茉希?」


「っあ、おかえり」


「どうかした?」


「や、なんでもない」



どうしたんだろ。



茉希がぼーっとすること自体珍しいのに、その上焦っているなんて珍しいどころかおかしい。



周りを見渡してみるも、特におかしなことはない。



「まだ決めてないの?」


「あ、ごめん。忘れてた」



謝りながらもたぶん聞いてない。



どうしたのかな。具合でも悪いとか?



「私のと一緒にする?」



そう聞いてみてもどこか上の空で、でも小さくうなずいたのを見てやっと注文することができた。