起こした方がいいかな。
でもいつも忙しそうだし、疲れてるのかもしれない。
先生が来たら起きるだろうし平気かな。
いろんなことを考えながら黒崎くんのことを眺めていると、一瞬喉の奥の方が苦しくなった。
その辺りを押さえて咳払いをすると、ピク、と黒崎くんの頭が動く。
「あれ……。寝てた」
「わ、ごめんね!起こしちゃった?」
まぶしいのか、目を手のひらで覆いながら起き上がる黒崎くんは、机の上でもう片方の手を動かす。
――カシャ
「あ、やべ」
メガネが床に落ちて覆っていた手を退けた瞬間、私は固まった。
「あー、ばれたか……」
あまりの衝撃に声を出すこともできずパクパクと口を動かすと、それを見た黒崎くんはふっと笑う。
黒崎くん、もとい……黒崎、郁弥くん。
お隣の黒崎くんは、あの、人気俳優だった。