「…もしもし亮平?」
リビングにいる竜騎に聞こえて欲しくなくて、自分の部屋まで移動をする。
そのためか、声も小さくなる。
『千鶴?急に電話して悪い。なんか取り込んでたか?』
「えっ、いや、大丈夫…」
『なら良かった。明日なんだけどさ、3時に千鶴ん家行けばいい?』
「う、ん」
亮平は何度かデートの後に家の前まで送ってきてくれた事があるから、あたしの家を知っている。
昨日までのあたしなら、明日が楽しみでしょうがないはずなのに…
『千鶴の家、入ったことないからかなり楽しみなんだけど』
「そんな期待しないで、ただの平凡な家だから」
『そんなこと言っちゃってさ。あと、泊まりも初めてだしな。千鶴の寝顔は可愛いだろうな』
「もうっ、亮平ったらぁ」
思わず顔が赤くなった。
『明日、色々楽しみすぎて、俺寝れなそうだし』
…ごめん、亮平。
こんなにあたしに優しくしてくれて、大好きなはずな彼氏がいるのに、あたしは何なのだ。
竜騎とキスなんかしちゃって。
『千鶴、―――大好きだよ』
「あたしも…、」
―――好き
いつもなら続くはずだった二文字。
だけどそこでためらった。
言葉が、出なかった。

