「今さら行かないとかなしだから」
考えてること、バレてたんだ。
そして、急に手を掴まれた。
「…っ、」
「ほーら、行くぞ?」
顔を覗き込んでくるしぐさにドキッ、また心臓が大きく跳ねた。
「え、あ、ちょっと」
引っ張られる。
精一杯の抵抗はしたけど、細いくせに力強い竜騎の手には敵わなくて、ついに家から引っ張り出されてしまった。
「行く!ちゃんと行くから、せめて帽子くらい被んなさいよ。有名人なんでしょ」
「ちぇっ、分かったよ」
家に戻った奴は、黒いキャップとご丁寧に黒ぶちのだて眼鏡まで掛けてきた。
んー…
とりあえず、これならまだ良いか。
自分にそう言い聞かせた。

