~ 鈴 ~ 「夏村、顔上げて」 私は首を振った。 「…腕、触るぞ」 「いやっ!」 思わず顔を上げて、手を振り払う。 「落ち着け。怪我を確認するだけだ」 霞んだ視界に、会長の顔が映る。 大丈夫。 この人は大丈夫。 自分に言いながら、会長を見つめる。 「触るぞ」 私は、ゆっくりと頷く。 右腕を優しく掴み、持ち上げる。 「……痛っ」