新しく住み始めるマンションの周りには一戸建ての家々が広がっている。

 遥はずっと外を眺めていた。

 まるで魂の抜けたような感じが何日も続いていた。

《ピンポーン!》

《ガチャ!》

 鍵を閉めていたはずの扉が開いた。

(えっ!?なんで?)

 綾が引っ越してきた。

「はぁ〜い!荷物はこっちに置いてね。あっ!お姉じゃん。何してるの?」

 遥は不思議な顔で綾を見た。

「あれ?なんで男の服があるの?」

「彼氏と一緒に住む予定だからよろしくね。鍵ついてるから大丈夫だし」

 遥は首を振った。

「イヤイヤそういう問題じゃないでしょ。私も生活するんだよ」

 綾は遥の両腕を掴んで目をウルウルさせた。

「だってぇ〜、さみしんだもん。あっ!お姉ちゃんにも相棒連れてきた」

「はい〜!?」

 ドアの方を見ると小さなチワワが走ってきた。

 尻尾をふりながら遥の周りを走り回っている。

「可愛い!このわんちゃんどうしたの?」

「お姉ちゃんが寂しいと思って買っちゃったぁ」

 遥はチワワを抱き上げた。

「本当に勝手なんだから。お父さんには内緒にしといてあげる。ばれないようにね」

「ありがとう」

 遥に少し笑顔が戻った。