身構える大吾のブレザーの襟が、強い力で後ろに引かれた。
前ばかり意識していたため、受け身も取れず派手に尻もちを着く。
(は? ナニ?)
「妾の前に立つでない。
…小鞠で懲りた。」
大吾は声の主を見上げた。
(‥‥‥嘘だろ?)
座りこむ大吾を背に隠すように立ったうさぎが、頭を砕く勢いで降り下ろされた鉄パイプを片手で掴み取っていた。
驚いた奴が鉄パイプの占有権を取り戻そうと必死に引いているが、ビクともしない。
今のうさぎは、いつもの彼女じゃない。
醸し出される雰囲気が、なんて言うか…普通じゃない。
以前文化祭で、怒った彼女を見たことがある。
そう言えばあの時も、祥子と小鞠を助けていた。
元々、人を従わせる威圧感を持っている少女だし、たじろぐほどの迫力があった。
だが、ここまでだったか?
気温が下がった気がする。
空気の密度が変わった気がする。
息が苦しい。



