赤い月 参


身構える大吾のブレザーの襟が、強い力で後ろに引かれた。

前ばかり意識していたため、受け身も取れず派手に尻もちを着く。


(は? ナニ?)


「妾の前に立つでない。
…小鞠で懲りた。」


大吾は声の主を見上げた。


(‥‥‥嘘だろ?)


座りこむ大吾を背に隠すように立ったうさぎが、頭を砕く勢いで降り下ろされた鉄パイプを片手で掴み取っていた。

驚いた奴が鉄パイプの占有権を取り戻そうと必死に引いているが、ビクともしない。

今のうさぎは、いつもの彼女じゃない。
醸し出される雰囲気が、なんて言うか…普通じゃない。

以前文化祭で、怒った彼女を見たことがある。
そう言えばあの時も、祥子と小鞠を助けていた。

元々、人を従わせる威圧感を持っている少女だし、たじろぐほどの迫力があった。

だが、ここまでだったか?

気温が下がった気がする。

空気の密度が変わった気がする。

息が苦しい。