うさぎが、路地にいくつか並んでいる青いポリバケツに声をかけた。


「尚人、出てくるが良い。」


「え? でも、オッサンは…
ぉうゎっ?!」


大吾が蹴り倒したものの隣に置いてあったポリバケツの蓋が薄く開き、銀縁眼鏡の鋭い目が覗く。

昨夜あんなコトがあったのに、立ち直り早すぎンだろ。

景時が赤い頭を掻きながら、呆れた声を上げた。


「アンタ、ストー…『敵情視察』は継続中なんだ?
てか、ゴミ箱て。」


「尚人、話は聞いておったな?
小鞠をこの場から連れ帰れ。
人助けじゃ、大好物であろう。」


ポリバケツの蓋が閉じられ、中から溜め息が聞こえる。

再び蓋が持ち上がり、ビシっと紺のスーツを着こなしたミスターパーフェクトが、指で眼鏡の位置を直しながら姿を現した。

肩の埃を払う仕草をして、姿勢を正す。


「仕方ありません。
これも使命でしょう。」