赤い月 参


足に、腰に、全身に、『闇』が絡みつく。

払っても。

払っても。

思うような存在に成れなかった『闇』はせめてもの宿主を求めているのだろう、執拗に水原に纏わりついて離れない。

だが、水原は『闇』を振り払うことすらやめた。

胸の辺りまで『闇』に沈み、力なく目を閉じるうさぎを見てしまったから。

鬼気など微塵も感じられない、儚いその姿。

まるで‥‥‥


(死んで…)


水原は血が滲むほど唇を噛みしめた。

『闇』に絡め取られて縺れそうになる足を必死で動かし、徐々に沈んでいくうさぎに手を伸ばす。

届け、届け、後少し…


「何故ここに来た?」


彼女の口が開き、低い声が漏れた。