うさぎが帯に挟んでいた扇子を手にし、空に向けて真っ直ぐ掲げた。

途端に凄まじい鬼気が彼女から放たれ、三人が尋常でない圧力に膝から崩れそうになるが、それも一瞬のこと。

鬼気は空に昇り始めた。

うさぎは手首で扇子を回し、鬼気の渦を作っていく。

上空へいくほど渦の裾野は広がり、暗雲に姿を変えているようだ。

月が消える。
闇が深くなる。

うさぎの…いや、鬼神の赤い瞳だけが爛々と輝き、天を見据える。

普通なら一生お目にかかれないような奇跡を目の当たりにして、三人は息を飲んだ。


「こんなものか。」


小さく呟いたうさぎが扇子を持った手を下ろし、鬼気の渦は消滅した。