「うさちゃん、いいよー。」


薫と二人なら、どれだけ範囲が広くても、ただ見えなくするだけの結界なら軽い。

あっと言う間に準備は整った。


「うむ。」


赤い着物の襟を大きくはだけて帯を前で結い、藤色の羽織を纏った美しい鬼が頷いた。

暗がりに赤い瞳が輝いて、銀の髪が月明かりを受けて光を散らす。

夜は彼女のためだけに存在すると思えるほど、綺麗だ。


(どんなうさちゃんも可愛いケド、やっぱりこのうさちゃんが一番好き。)


景時がだらしなく顔を緩めていると、秋時と薫に両サイドから膝蹴りを食らった。