赤い月 参


目を丸くした後、なんじゃつまらぬ、と拗ねた横顔を見せるうさぎの頬を景時はそっと撫でた。


「拗ねないの。
でも、ちょっと意外。
もっと本気で怒るかと思ってた。」


「仕方あるまい。
今の世では、人にとって我らのような人外の存在自体、珍しいのであろう?
その上、そなたと妾のようになんの利害関係もなく共におることなど、思いもよらぬのであろうな。」


おー… 大人な意見。

でも… 利害、ね。
あると言えばあるんデスケド。

だって、俺は君が欲しいから。

景時はうさぎの頬から手を滑らせ、そのまま銀の髪を指で掬い上げる。

絡まることも引っ掛かることもなく、指をすり抜ける美しい髪。