「一人でなんとか、だと?
そなたのその下らぬ思い上がりのせいで、祥子は女として最も耐え難い運命に身を委ねるところであったのだぞ?」


大吾は顔を仰け反らせながら、口を両手で覆って景時に支えられる祥子に目をやった。

彼女の目に浮かぶ涙が伝染したかのように、大吾の視界も歪む。


「迷惑じゃと?
そのような事を気にしておる場合か、この阿呆が。
泣き叫び、両手を地に着き、足に縋りついてでも助けを乞うが良い。
それが他者の目にどのように映ろうと、大切な女を守り抜くのが真の男というものであろう!」


ふんっ、と息を吐いて大吾の髪を離したうさぎは、今度はつかつかと景時の前に立つ祥子に歩み寄る。


「アンタ…
巻き込んだから怒ってンじゃないの…?」


「黙れ。」


目に涙を溜めて自分を見下ろす祥子の頭を、うさぎは軽くはたいた。