ある冬の日




審判を担当する奴らはただなんとなく、なんとなーくで加点していけばいいわけで、何も面白くもないけど、オレはこの位置嫌いじゃない。



体育館全体に響きわたる声援だとか喋り声だとか教科担任の鳴らす笛とか、そういったいろんな音を独り占めにした気分になる気がするから。



体育館の中で響く音がオレは好きだ。



今聞こえる音で特に好きな音は、全部で6つ作られたコートの中で試合をしている奴らが動いたときに聞こえる音。



体育館シューズが体育館の床と擦れたときに“キュッキュッ”と聞こえるこの音。



審判をしていることで、この光景をどこか客観的に捉えてしまうのはなぜだろう。



不意に、体育館の外からこの光景を眺めている気分になった。



「優也そっち点入ったぞ」



「あ、おう」



同じ審判をしているそいつからの一言で、やっぱりオレはこの学校の体育館の中に居たんだと、なんだか深い眠りから無理やり起こされたような気持ちになった。