ある冬の日




教科担任は笛を鳴らした後で、何事もなかったような涼しい顔をしてすぐに次の指示を生徒たちに伝えてきた。



その“生徒たち”にオレも含まれているんだと思うと、なんか集団行動とか連帯責任とかっていう言葉の曖昧さみたいなものを感じる。



教科担任から見たオレは【堺優也】ではなくて【この学校の生徒堺優也】になるんだろうか。



もしそうならなんか嫌だ。



別にオレはこの中学に入りたくて入学したわけじゃないし、勝手に“この学校の生徒”って言われてもなあ。



ほんとは隣町の中学に行きたかったから、オレ。



小学校のとき仲良くしてた奴らはほとんど隣町の中学に行っちまったし。



住所がほんの少し違っただけなのにさ。



そう思うと世の中って案外不公平なんだな。



……隣町の中学に行ったあいつら、今なにやってんだろ。



ちゃんと進路決まったのかな。



もしかして彼女とかできてんのかな。



……元気にしてんのかな。



小学校のとき携帯持ってなかったからあいつらの今、全然わかんねえ。