ある冬の日




千尋が手紙を手に取って送り主がウチだと気づくとウチの方を振り向いた。



ウチが『手紙開いて読んで』というジェスチャーをすると千尋は手紙を持った手を軽く揺らした。



口元は『了解』といってるように見える。



ウチ視力悪いから離れたところにいる千尋の口元まではよく見えなかったけどたぶんそうだ、うん。



千尋が手紙を読んでくれているのを確認すると、ウチはミュージカルの映像が流れてるスクリーン画面に視線を戻した。



なんかちょうど感動的なシーンで、若干感動してる自分がいた。



結局つまんないとか言いながら、話の流れはちゃんと捉えてるんだな、ウチ。



ちょっと驚いた。



「これ中西からだって」



「え?あ、ありがと」



スクリーン画面にくぎづけだったウチの肩を軽くたたいて隣の席の男子が2つ折りの紙を渡してきた。



それは千尋からの返事の手紙だった。