ある冬の日




室内は薄暗いけど真っ暗ってわけじゃないから文字も書けるし読める。



ときどきスクリーンからもれる光が当たると文字もはっきり読めちゃうし。



これなら千尋もわかるでしょ、うん。



メモ帳から手紙を書いた紙をはがして半分に折る。



そして、



「これ千尋に渡して」



と声のボリュームを落として隣の席の男子に言いながら千尋宛に書いた手紙を渡した。



中3にもなると男子と話すことに抵抗がなくなってくる。



男子たちも男子たちでだんだん目を見て話してくれるようになったし。



なんか、ここにきてクラス全体の雰囲気も良くなってるなって実感するし。



『あと少しでこの中学を卒業するんだ』ってみんなが思い始めてるから、



普段あんまりしゃべったことない子とも話そうっていう気持ちになるのかな。



隣の席の男子に渡した千尋宛の手紙は、男子女子女子男子という具合に渡されていって、あっという間に千尋のところまでたどり着いた。