そして、家の兄ちゃんは普通でないということ

を改めて人に諭された。

「俺が悪いから逃げられてもしょうがない。」

「どうしてそう思うのですか?」

ネガティブ思考の持ち主なのかしら?

「弟のためになることをしたはずが返って弟を

酷く傷つける結果になったことがあってね。

それ以来、口を利いてくれないんだよね。」

お兄さんは弟君のことがきっと大切なんだね。

そうじゃなきゃ、そんな悲しそうな顔をしない。

「それなら、いつか弟君にその想いが通じる

ことが出来たらお兄さんはそんな悲しそうな

顔をしなくて良くなりますか?」

とても綺麗なお顔立ちなのに影を落とす

その顔では勿体ない。

「そうだね、通じる日が来るとは思えない。」

悲しそうな瞳が揺れる。

「だ、駄目です!!」

最初から諦めては絶対に望みは叶わないわ。

「えっ?」

「いいですか、お兄さんは弟君を大切に思って

いるからこそ分かって貰いたいと思っているはず

なのです!!きっと、その想いを受け取ったら

弟君はお兄さんから逃げたりしません。」

見ず知らずの兄弟仲を説教する日が来るとは・・・

ビックリした表情でお兄さんはあたしの説教に

ポカーンとした顔で見つめるのだった。

「そして、前向きになるのです!!」

辛気臭い顔しては駄目なのです。

「ふっ、うん・・・」

涙をポタリ落とすお兄さん。

涙もろさはピカイチなのね。

「きっといいことありますよ。

お兄さんに幸あれです。

前向きに考えると結構人生楽しく

生きられるのですよ。」

下を向いてばかりの人生はつまらないと

母さんが言っていたわ。

前を向いていたらいいことを見逃すことも

なく掴み取れるんだもの。